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河川油流出事故事例


【 河川油流出事故の実態 】

2.河川油流出事故対策の遅れ

河川での油流出事故は、規模の大小はありますが、その数は驚くべき数字に上ります。それにもかかわらず、流出油処理資材・処理業務者、またその関係行政機関等で話題となり、資材研究が行われ取りざたされるのはナホトカ号事故に代表される「海洋汚濁」の方です。その原因として、

  1. 流出量の規模が大きいこと (ナホトカ号事故では約1万キロリットル)
  2. 潮流、風、波等により、その拡散範囲が膨大なものになる
  3. そのため、自然破壊、漁業への影響、水鳥・水生生物への影響が計り知れない事
  4. 回収業務も大規模であり、なおかつ完全回収は不可能である事

などが挙げられます。この為、海洋のそれに比べ、河川での事故対策は格段に遅れています。処理対策、事故発生時の処理マニュアルも無く、石油類を扱う業者にも、万一の漏油に備えての設備、処理資材備蓄、保険加入は義務づけられていないのが現状です。そしてなによりも、事故処理の経験を積んだ専門家がいないという問題があります。
しかし、河川で重油1万Lの流出は、処理費用平均数億円(油除去作業、漁業補償、発電ダム、飲料水取水制限など)と言われており、紛れもない大事故です。また、消防署の調査によると一つの一級河川周辺の貯油量の合計はゆうにナホトカ号事故の流出量を上回るのです。しかも、河川事故は、直接私たちの飲料水を犯しかねません。そのような危機管理体制の遅れが、計り知れない悲劇につながるのです。

 

3.事故対策の必要性から

事故が起こったとき、まずどこに通報すればよいのか。事故発生時の迅速な情報伝達は、その後の油処理の早期対応に関わる重要な部分です。その一分一秒を争うという状況の中で、適切な連絡体制が整っていなかったばかりに、事故処理に至るまでに多大な時間のロスが生じたという事例もあります。

また、各関係業者、機関の処理資材(オイル吸着マット、オイルフェンス等)の備蓄が不十分で、事故が発生してから、あわてて各地から取り寄せるという事も多々あります。

大量の石油等、油を使う各業者が保険に加入しておくことも大切です。海洋での事故処理費用は、まさに何百億円という莫大なものですが、その多くは保険機構によって支払われています。一方、河川での事故の場合、漏油に対しての保険加入率は低く、ほとんどの場合、数億円にのぼるその費用を全額事故の原因者が支払うという状況です。

対策の不備によって取り返しのつかない事態に陥ってしまう前に、一刻も早く油流出事故に対する環境を整える必要があるのです。

数々の事故処理を経験し、その重要性を身をもって知った弊社では、平成10年、流速の変えられる「人口河川」を製作し、流水中における各種マットの吸着比較実験(上の写真)、そして完全回収可能なゲル化剤による油除去実験を各機関に公開で行い、特にゲル化剤の性能を認められました。その結果、平成11年度より建設省中国地方建設局を中心に、各所で備蓄体制がとられるようになりました。また、建設省の所轄する河川には「河川水質汚濁防止協議会」が創設され、それぞれの河川に関わる全県市町村が会員として構成されたのです。


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